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コラム
(2024/08/16)6月上旬、トヨタ自動車をはじめとする5社が国土交通省から認証不正を指摘され、各社が製造する一部の車両が出荷停止扱いとなった。遡ること、トヨタの子会社であるダイハツ工業で発覚した大規模な車両認証不正がひと段落ついたタイミングで明るみに出た問題。それから2ヶ月あまり、その後、各社はいかに対処したのか。
・まず5社の現行6車種を含む計32車種が対象に
問題が発覚したのは6月上旬。トヨタのほか、マツダ、ヤマハ発動機そしてホンダやスズキの名前も公表された。不正箇所は各社それぞれ異なる場所であったが、大量生産に必要となる「型式指定」の手続きを巡り認証不正があったとされる。では、なぜ一斉に問題が発覚したのか。
答えは先のダイハツの不正問題にたどり着く。あまりにも大規模な”社を挙げての”不正だったことを受け、国交省は自動車メーカーなど85社に対して、過去10年間分の調査と報告を求めていたのだ。結果、雨後の筍のように次々と各社で問題が明るみに出ることとなった。問題発覚後、各社はこぞって「安全性に問題はない」と答弁していたが、消費者の立場としては、どこかしら腑に落ちない気持ちになったはずだ。確かに悪質性はなくとも、「わからないようにすれば問題はない」という認識そのものに対し、消費者は不信感を抱いてしまうとは思わなかったのか。法令を遵守することへの意識が希薄だと思わざるを得ない。
・現場との温度差、それともガバナンスの問題?
提出するデータや試験に使用する車両に手を加えることを繰り返し、常習化していたと考えられる今回の問題。今になって始まったことでない、というのが一番の問題だと思われる。自己的、つまり現場ひいては会社として都合が良いようにルールを曲げることが当たり前になってしまった背景にあるのは何なのか。現場まかせでチェックがゆるくなり、すりぬけてしまうのか。はたまた、生産性を重視し、会社として”見て見ぬふり”をしてきたのか。国交省は各社に向けて不正抑止、早期発見を求めると同時に、第三者の目を入れる仕組みづくりを検討するようだが、まずは、昔ながらの体制に風穴を通すところから始めることが必要だと思われる。
問題発覚後、日を追うごとに各社には国交省による順次立ち入り調査が実施。書類確認はじめ、現場における不正の事実関係の確認を重ねることになった。日本の基幹産業のひとつである自動車産業の名だたるメーカーが犯した失態は、日本経済にも大きな影を落とすことになってしまった。
・トヨタが初の是正命令を受ける
それから2ヶ月あまり。8月に入ると国交省の調査がさらに進んだ。そのなかで、トヨタは型式指定を巡る認証不正において、さらに7車種の不正が明らかとなり、さらには道路運送車両法に基づいた是正命令が出された。これは、同社にとって初めてのこととなる。だが、過去には日野自動車、ダイハツ工業、そして豊田自動織機と是正命令を受けているのは、すべてトヨタグループになる。まさに会社としての体質の問題ではないのか、と勘ぐってしまうのも無理はない。
これに先立ち、同社は「不正はない」と発表していたのだが、国交省による立ち入り検査で発覚したため、大きな衝撃が走った。是正命令を受けた同社は、その後、1ヶ月以内に再発防止策の提出が求められた。「認証業務が現場に依存した体質になっていた」という会社側の見解が発表されたが、国交省では、不正を「意図的」と指摘したという。こうなってしまった以上、同社が得意とする”カイゼン”を全面的に導入し、”悪しき慣習”を一掃することが求められるだろう。
業界全体としての信頼を揺るがすことになった今回の問題。トヨタに限らず、いずれも会社も自浄作用をどう働かせていくかが問われるところ。結果として、現場に不正を強いるような体制がある限り、同様の問題は時間を経てまた再発する可能性が高い。ダイハツでの問題発覚後、次々と他の会社も同様の過ちを犯していたことが発覚したことを考えれば、容易に想像もつく。
いずれのメーカーも、明るみに出た不正問題によって、安全性が担保されないようなことにはなっていない。不幸中の幸いではあるが、安全性を直接揺るがすような問題ではない、と軽視することがあってはいけないし、メーカーは消費者からの信頼が失墜したと受け止めて、今後の再発防止、信頼回復に役立ててもらいたい。