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チャイルドシート使用基準、見直しへ

コラム

(2024/08/26)

このほど、日本自動車連盟(JAF)がチャイルドシートにおける推奨基準を来月から変更する意向であることがわかった。乗車中の子どもの安全を守る役目を正しく果たせるよう、新たな基準を定めるものだ。どのようなものになるのか。

・シートベルトではなくチャイルドシートの使用を
今回、この見直し案が浮上した背景にあるのは、今月中旬、福岡市内で発生した交通事故があると考えられる。路線バスと軽乗用車の事故だったが、バスに衝突した軽乗用車には、5歳、7歳の姉妹が後部座席にのっていたが、車内にチャイルドシートはなく両者ともクルマのシートベルトを着用していた。正面衝突の反動か、姉妹は腹部が圧迫されており、内出血した可能性があると報道された。また、新聞等各報道では、救助にあたった人たちが、姉妹には全然外傷がなかったため、死亡するとは思わなかったと伝えている。本来、シートベルトは乗車する人の鎖骨や骨盤、胸骨にベルトがかかるように装着するものだが、今回は適切にベルトがかからず、衝突の際に首や腹部に食い込み、内蔵等致命的な影響を与えたと考えられる。

現行の道路交通法では、6歳未満にチャイルドシートの使用を義務付けている。加えてJAFは使用推奨基準を140センチ未満としていた。折しも、JAFは関係団体等との協議を昨夏から行なっていたとのこと。今回の事故を受け、使用基準を150センチ未満へ引き上げることが迅速に決まったようだ。

・年齢? それとも身長? どちらを基準にするのか
前述のように、日本国内での着用基準、義務は年齢で区切りをつけている。実のところ、自動車メーカーが加盟する日本自動車工業会では、身長150センチまで児童用チャイルドシートの使用を推奨しているため、今回の痛ましい事故を受け、JAFが早急に推奨身長の引き上げに着手したことも納得できる。今回、事故に遭った姉妹の年齢を考慮すると、ちょうど身体の成長過程にあり、チャイルドシートの使用を避け始め、結果として着用率が低下する傾向にあるころだとも考えられる。

一方で、身長によって基準を定める国も少なくないとのこと。いくつかを例に挙げると、イギリスの場合は「身長135センチ、12歳のいずれかになるまで」、ドイツは「身長150センチ、12歳のいずれかになるまで」と”選択肢”がある。これに対し、イタリアでは「体重や年齢に関係なく150センチになるまで」と基準を定めている。一方、アメリカは州によって異なるものの、身長およそ145センチ未満に定めているところが多いとしている。いずれにせよ、低身長の子供への的確な着用推奨の見直しは歓迎だが、年齢にこだわらず、検討することを再考する必要があるのではないだろうか。

まず、年齢でもなく、身長でもなく、シートベルトの着用は自らの命を守るものとしての安全対策のひとつであることを忘れてはならない。そもそも、今回のJAFの決定は、”推奨”基準の引き上げであり、義務に言及しているものではないのだ。

・シートを着用しないと違反なのか?
シートベルトやチャイルドシートの着用義務は、警察庁の管轄。変更には、道路交通法の改正を要する。6歳未満のチャイルドシート着用が義務付けられた2000年以降、大きな改正は行なわれていないのが実情だ。今回の動きで年齢を優先するのか、身長で基準値を定めるのか。しっかりと議論し、推奨案含めての見直しが必要になると思われる。

ちなみに、チャイルドシートを着用せず、そのまま子どもを乗車させた場合、運転手に対してのペナルティは発生するかどうか、ご存知だろうか? 現在は、「幼児用補助装置使用義務違反」というものがあり、交通違反としての1点の減点が伴う。だが反則金は発生しない。どことなく”中途半端”感が漂う。また、仮に6歳未満であっても、成長著しく140センチ超の高身長である子どもに対し、ジュニアシートの装着を強いることにも違和感を感じる。

また、150センチへの推奨引き上げにあわせ、似通った身長の大人にもジュニアシートが必要なのか? といった議論がネット上でかわされている。乗車する人の身長や体格だけでなく、車種によっても微妙にシートベルトの位置が異なり、着用の際にシートベルトが首にかかってしまうケースもあるとしている。安全を確保するためのシートベルト着用には違いないが、体格が異なるなかで”正しく”使うためにも、まずは自身による意識改革が必要なのかもしれない。これを機に、どのような形でシートベルトを着用しているか、改めて確認してみてはどうだろうか?

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