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コラム
(2024/09/27)9月上旬にトヨタ自動車とドイツ・BMWが燃料電池車における主要部品の共同開発を発表した。提携関係を強化することにより、BMWでは2028年に量産型FCVを生産するという。水素社会実現に向けた協力関係の強化によって、両社そしてFCVの未来はどのように動いていくのだろうか。
・究極のエコカーであるFCV
EV車同様、走行中に二酸化炭素を排出しないFCV。EVはバッテリーを車体に搭載するが、FCVは水素燃料と燃料電池、そこに空気中の酸素が加わり電気を発生。それを駆動に充てる。水素を利用するという特殊なシステムも相まって車両価格が高額であることも足かせとなり、トヨタでも思うような販売には至ってはいない。FCVの先駆者的立場であるトヨタがFCVを世に送り出したのは、2014年12月。開発はさらに遡り、1990年代から着手していたと伝えられているが、当時は2000年代初めに将来の環境対応車になりうる位置のクルマとして捉えられていた。だが、同社のFCV「ミライ」は、リリース以来およそ10年経った現在の時点でも全世界での販売台数は2万6千台ほど。水素供給するにも、日本国内にある「水素ステーション」はわずか152個所に留まる。また、水素という特殊な燃料を運搬する安全性の確保、保管における技術面などさまざまな課題も山積している。単なるインフラ不足としての問題とは一線を画しているとも言えるあろう。結果的にEV普及との差は明確であり、FCVはまだまだ”遠い存在”としての認識に留まっている。
ここで、現在発売されている「ミライ」の”経歴”に触れてみたい。
「ミライ」は2014年のデビュー。当時は地方自治体で公用車として購入する動きもあったと記憶する。その後、2代目は2020年に誕生。初代ミライと比較し、航続距離は130%の850kmへ。だが、車両価格は710万から805万円と以前高額のまま。「ミライ」を購入するのであれば、EVともう一台手頃なガソリン車の2台が購入できるくらいだ。さらに、最初は航続距離の短かったEVも、今やストレスレスの状態で走行が可能になっている。それだけに、EVでなくPHVを手に入れようという選択理由を見つけることが難しい状態というのが現実だ。
・究極のエコカーだが、エネルギーの損失は大きい!?
水素が動力に欠かせないFCV。だが、この水素を燃料として用立てるのが結構難しいという。ましてや、その過程において大量のエネルギーを消費するというのだ。これはどういうことなのか?
まず、水素は人工的に製造が必要。大量のエネグリーン消費が過程で生じる。しかも、一旦電気で水素を作り、その水素でまた電気を作るというプロセスの間に、エネルギーはおよそ70%損失するとのこと。膨大なロスが発生するという、なんとも効率の悪い燃料を用いるのがFCVということになるのだ。
このたびのトヨタとBMWにおける開発協力では、第3世代とする燃料電池技術を活用した乗用車用パワートレインシステムの共同開発を手掛けるとしている。これまでも多方面でFCV推進を意識した協力を実施しているが、今回は、期間領域にも協業範囲を拡大。コスト減で実現できるFCV開発に着手するという。需要開拓という点で、もはや”待ったなし”という苦渋が見て取れるとも言えるのではないだろうか。
日本国内を見ても、EV普及が進む現在でありながら、まだまだインフラ設備が充実しているとは言い難く、時としてユーザーの居住環境が問題になることもある。ひいては、FCVの場合それ以上に利便性が低くなることから、さらにハードルが高くなる。正直、トヨタとしても、乗用車でのPHV展開はまだ先の話であると捉えているようで、当面は中長距離トラックはじめ、大型バスといった商用での活用が主体となると考えているようだ。
開発協力を強化するなか、BMWは2028年に量産型FCVをリリースする予定としているが、これがトヨタにとって、さらにFCV全体にとっての”新たなる時代の幕開け”になるのかどうか。また、それまでの間にトヨタはどうFCV開発に向けてアプローチするのか。その動きをじっくりと注視していく必要がありそうだ。