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トランプ次期大統領就任後の関税に警戒

コラム

(2024/12/19)

2025年1月にアメリカ大統領へと就任するドナルド・トランプ氏。就任後の動向に耳目が集まるなか、選挙期間中から声を大にしてアピールしてきたことがある。それが、関税の強化だ。世界中の企業が”その先”に備え、さまざまな準備を進めていくのか。日系企業としては、自動車業界がその影響を警戒している。

・強気の「トランプ外交」、再び
すべての輸入品に対し10~20%、中国製品には60%の関税を課すと選挙期間中から声を大にして公言してきたトランプ氏。第1次政権のときも関税引き上げを切り札にし、他国に厳しい条件をつきつけ、要求をのませる手腕を発揮してきたことは記憶に新しい。”強いアメリカ”を信条に、今回も国内から絶大な称賛を得るために就任前から得意とするSNSから情報を発信。就任初日にあたる来年1月20日、早速に大統領令を出すと表明した。就任を前に、積極的な言動をアピールすることは、国内での支持をより強固することにも繋がるため、関税を材料に圧力をかける手法は、”うまみ”が大きいのだ。

この”前倒し”発言を受け、関税引き上げ前に企業の動きが慌ただしくなっている。在庫を積み増す動きに転じており、なかでもアジア発アメリカ向けの海外輸送量が過去最高になっているという。企業のなかには、関税が一気に引き上げられる中国から撤退し、タイへと生産拠点の移転を始めているという。日本の企業ではあるが、中国で精査されたものがアメリカに輸入する際には、当然ながら中国にかけられる税率が適応されるためだ。タイムリミットが迫るなか、企業にとってはその費用もバカにならず、新たな負担が発生しているようだ。

・メキシコ、カナダへの関税が与える自動車メーカーへの影響
アメリカ以外の北米に生産拠点を分散させている日本の自動車メーカーへの影響も甚大だ。スバルやマツダでは、2025年度の営業利益が3割も押し下がると見込んでおり、再びアメリカ生産へと移管する可能性も出ている。大幅な生産体制の見直しともなれば、屋台骨に与える影響も少なくない。先のSNSでの発信で、メキシコとカナダへの関税は25%へと引き上げると宣言。新聞各紙では、もともと、不法移民や合成麻薬「フェンタニル」などが両国からアメリカへと流入し続けていると主張、その対抗処置の一環であるとトランプ氏自身が明言したと伝えている。アメリカの輸入額トップ3を占めるのが、明記しこ、中国、カナダ。このことを考えても、アメリカの貿易赤字削減の実現に向け、強気な態度で追加関税策を推し進めていくことに違いはなさそうだ。

実のところ、メキシコとカナダの間には、一定の条件を満たせば”関税ゼロ”でモノを輸出入できる貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定」(USMCA)なるものがある。2020年に発効された協定で、アメリカとしては、とりわけ雇用者数が多い自動車産業をアメリカ国内に戻したいという狙いがあったと言われている。そのため、一定以上の時給などは関税ゼロの条件にしたほどだ。なかでもメキシコは人件費が比較的安く、トヨタ、ホンダ、日産、マツダといった日系メーカーが完成車工場を構えている。また、カナダでは中東部オンタリオ州を中心にして自動車産業が集積。トヨタやホンダの完成車工場がある。さらに、現在は両国の自動車産業の集積地に多くの部品メーカーなど関連企業も多く集まっていることから、もし高関税が発動されると、サプライチェーンがあって成立する自動車メーカーのビジネスが成り立たなくなってしまうのは明らか。関税分だけ材料費が割高となり、生産コストがその分上昇するため、結果としては製品価格に転嫁されてしまう。つまり、最終的には国内の消費者であるアメリカ国民が負担することになるわけで、ある意味”本末転倒”になりかねない。生産工場からサプライヤーまですべての企業を再びアメリカ本国に呼び寄せ、GDPを増やせるのであれば話は別だが、当然人件費も高く、今となってまた設備投資を一からすることも当然ながら難しい。

日系の自動車メーカーにとっては、アメリカ市場での業績悪化もあって、高関税への対応はさらなる”悩みのタネ”になるわけだが、この逆風にどう対処するのか、動向が注目される。

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