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コラム
(2025/02/25)ドナルド・トランプによる第2次政権が始まった。就任直後から、大統領令を次々に発令。世界各国に向けて”強いアメリカ”を猛烈にアピールするなか、日本にとってやはり気になるのがクルマ関連への関税だ。
・リクエストのハードルはより高く
関税とは、一般的に輸入品に課される税のことを指すが、今回の話はアメリカのトランプ大統領が表明した自動車への25%関税方針について。日本からアメリカへ輸入される自動車に課す税率を大幅に引き上げるとしている。この措置に戦々恐々としているのが、日本政府、そして日本の自動車メーカーというわけだ。
2024年、日本からアメリカに向けて輸出された乗用車はおよそ133万台という。これは、日本からの輸出車に乗用車のおよそ3分の1に値する。参考までに、日本の自動車メーカーの多くはアメリカにも生産拠点を構えており、たとえばトヨタの場合、日本からおよそ53万台輸出しているが、アメリカ現地での販売台数がおよそ233万台と言われていることから、日本以外でおよそ180万台を生産していることがわかる。しかしながら、すべての車両をアメリカで生産しているわけではなく、カナダやメキシコに生産拠点を構えている。そしてアメリカでは、対カナダ、対メキシコにおいてもクルマへの関税は25%にする方向であることから、トータル的にはアメリカで販売されるおよそ7割のトヨタ車に、25%の関税がかけられる可能性が出てくるというわけだ。関税が導入された場合、メーカーが販売価格に”上乗せ”する形で値上げすることになれば、富裕層をターゲットとする高級ブランドはともかく、関税が跳ね上がる大衆車は、不利な条件が増えることになりそうだ。いずれにせよ、日本にとっては、対米輸出額のおよそ3割を占める最大の輸出品(2024年)であるため、関税の引き上げは悪影響を与える公算が高い。
・アメリカの狙い、日本の対応
アメリカとしては、現在、カナダやメキシコでの生産拠点をアメリカ本国へと”復帰”させることも見越しての関税の引き上げに踏み切りたい。そうすることで、雇用の確保にも繋がり、当然のことながら税収増も可能となる。”強いアメリカ”の復権のひとつとして欠かせないポイントだと考えても良いだろう。なお、現在の自動車関税は2.5%。つまり、新たな税率が導入された場合、一気に10倍となるわけだ。なぜここまでトランプ政権は自動車への関税を引き上げたがるのだろうか。
トランプ大統領としては、日本車の輸出だけでなく、日本の自動車市場そのものを不満に思っているという話もある。前回、大統領を務めた際にも口にしていたのが、「日本ではアメリカ車が売れない」ということだった。日本自動車輸入組合のデータによると、2023年に日本が輸入したアメリカブランドの自動車は1万8958台にとどまる。このなかには、バスやトラックも含まれており、海外自動車としては、全体の1割にも満たないという。日本では、海外からの輸入車には関税をかけてはいない。だが、”アメ車”は正直人気が高いとは言えない。そのことをトランプ大統領は快く思っていないのだ。
自動車への関税はなくとも、トランプ大統領が声高に批判するのが「非関税障壁」だ。一般的に、関税以外の要因で輸入品の流通が制限されることを、非関税障壁というのだが、自動車の場合は安全基準の違いや車検制度が障害となっており、そこに”アメ車”の不人気につながっていると主張している。とはいえ、クルマ好きの日本人なら、そうではないということがすぐに理解できるかと思う。”ガタイ”が大きく、燃費が芳しくないアメ車ゆえ、日本の道路事情には合わないのだ。もちろん、そういう”本当の理由”を理解した上でなおも我を通すのがトランプ流。自動車を対象にした関税の見直しの発動は、現時点で4月以降になると伝えられているが、日本国にとって基幹産業である自動車産業をどう”擁護”するのか。今後の政府の対応から目が離せない。