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米、自動車関税は日本も同等に

コラム

(2025/03/17)

2月のコラムで、ドナルド・トランプ政権が目論む自動車への関税について触れたが、今回はその続きを。このほど日本にとっては厳しい条件が提示されることとなっている。

・対象はすべての国へ公平に
前回、 このコラムで紹介したときには、まだ正式な関税のアナウンスはなかった。だが、このほどトランプ政権の関税政策を担うラトニック商務長官がアメリカのメディアに向けて明らかにした内容によると、日本車も自動車関税の対象になるとしている。 日本政府としては、その対象から除外される望みを持っていたが、それは叶えられないこととなった。 その背後にあるのは、やはりアメリカへの日本車の輸入の多さが影響しており、トランプ政権はその台数を問題視していると言われている。当初の時点で、トランプ大統領はその関税を25%程度と語っていたが、 これは、現在の関税に対して10倍へと跳ね上がる。新たな税率が導入されれば、日本の自動車メーカーが被る影響は相当に大きくなるのは言うまでもない。日本としては、一縷の望みを託していた部分もあるが、 ラトニック商務長官がメディアの質問に対し、「日本が韓国やドイツなどより不公平に有利になるような事はしない。どこかの国の車に関税を課すなら、全ての国に関税をかけなければならない。それが公平だ」などとコメントしたことから、極めて難しい情勢に置かれることは明確だろう。

今回の関税の引き上げは、何も自動車に限ったことではない。アメリカでは自動車はじめ、鉄鋼アルミニウム、半導体などの関税率を見直し。これらすべては国家の安全保障に極めて重要になるものばかりであり、アメリカの主要産業を保護する意味でもある。とりわけ日本同様、アメリカにおける自動車産業は製造業の根幹。優先順位も当然ながら高いというわけだ。関税を引き上げることにより、貿易赤字削減も含め、この取り組みによって、国内での生産実化に期待をかけている。一方、日本における昨年の自動車の対米輸出額は6兆円を超えている。またこれは、対米輸出額全体のおよそ3割を占めている最重要品目でもある。

・メーカーへの影響は?
関税強化が発動された場合、日本の基幹産業のひとつである自動車メーカーへの打撃は必至。政府が除外を求めてはいるものの、もはや”暖簾に腕押し”とはこのこと。実現する見込みはないだろう。さらに、前述のように、日本からの自動車だけに限らず、日本の自動車メーカーが拠点を構えるメキシコ、カナダの工場からアメリカへと渡る自動車も”輸入車”であるため、同様の25%関税が適用される。恐ろしく高い関税を回避する方法としては、アメリカ国内の工場で完成車を製造するしか方法はないというわけだ。もちろん、現在もアメリカ本土で日本車の製造は行なわれている。お手頃価格の車両がそれに該当すると言われているが、いわゆるハイブランドの高級車_つまり”儲けの出る”日本車は、「メイド・イン・ジャパン」として日本の港から船ではるばるアメリカへと運ばれているものになる。参考までに、日本では、1965年に乗用車の輸入を自由化。関税も段階的な引き下げに取り組み、最終的に1978年には自動車および自動車部品の関税を撤廃している。当然ながら、アメリカに限らず、すべての国からの輸入車への関税は課してはいない。

厳しい立場におかれた日本政府だが、諸外国のような対抗措置には至っていない。例えば、隣国カナダの場合、アメリカからの追加関税を受け、アメリカに供給している電力料金の関税を上乗せした。当然ながら、それをよく思わないアメリカ側は即座に追加関税を引き上げる措置を取り、鉄鋼、アルミニウム製品がその対象となった。日本はアメリカに対し、”切り札”のようなもので対抗する手段はなく、されるがままの状況になりかねない。だが、結果としてアメリカ本国で販売される自動車価格へと上乗せされるため、価格高騰を引き起こす可能性もある。価格が上がってもなお、アメリカで日本車を買い求める消費者がどれほどいるのかどうか。そこも不透明だ。

ただ、就任後のトランプ政権の動向を見る限り、都度状況が変化するものが多い。たとえば、ウクライナとロシアの停戦に関する内容ひとつとってもそう。最終的な決定を前にコロコロとその内容が変わることも多く、先の読めない発言に右往左往することも少なくない。ただ、間違いなく言えるのは、日本でアメリカ車が売れないことへの不満が大きいという点。ボディサイズが大きく、燃費性能も決していいとは言えず、このガソリン高の昨今を考えると実用的ではないと思われても仕方ないのではないだろうか。アメリカのクルマを日本市場で売ろうとする”本気度”が感じられない状況に、まずは解決策を見出すことこそが早急だと思えて仕方ない。

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