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日産、巨額赤字で工場閉鎖を検討か

コラム

(2025/05/19)

ホンダとの経営統合協議の話が立ち消えになり、その後は独自の路線で再建計画を練ってきた日産自動車。今月中旬に発表された2025年3月期決算において、6808億円もの巨額赤字を計上することとなった。そこで浮上したのが大規模なリストラにつながる工場閉鎖の検討。ただし、この件に関して日産自体は「すべて臆測によるもの」としているが、はたしてその行方は?

・経営再建を目指すなか
2025年3月期決算で発表した純損益は6708億円。同社としては、過去3番目の規模になるとしている、これを受け、同社は経営再建の一環として、国内外で7つの完成車工場を減らす計画があると明かしている。また、これに合わせ、人員削減は以前発表していた9千人を修正し、計2万人に広げるという。このような大規模リストラに着手するのは、かつてカルロス・ゴーン氏の手腕によって進められた再建計画「日産リバイバルプラン」以来のこと。四半世紀前に実施したときと同等のレベルでのテコ入れが始まることになる。

今年4月1日付けで新たに社長に就任したイヴァン・エスピノーサ氏。「痛みを伴うが、いま手を打たなければ悪化するだけ」と言い、減損損失とリストラ資金を損失計上することで、社内の”膿”を出し切ろうという考えをしており、自動車事業においては2026年度までに黒字化する目標を掲げ、この再建計画を「Re:Nissan」と名付けた。

原因として挙げられるのは、世界の二大市場であるアメリカと中国での不振。アメリカ市場では、かつて安売りが前に他ブランド価値の低下がまだ尾を引いている模様。結果としてハイブリッド車両の投入が遅れるなど、商品のラインナップに問題があるとしている。また、中国では日産の”本丸”である電気自動車が、地元中国のメーカーとの競合で後れをとる形となり、ここ数年の販売が振るわない状態だ。流れとしては、拡大路線を追求したものの、販売でつまづき、過剰な生産能力を抱えることとなり、最終的にリストラへ……。これではまるっきし四半世紀前と同じ道程をたどることになってしまうだろう。

・工場削減に着手
結果、国内外にある17の完成車工場を10まで減らすことを発表。従来計画していた1万1千人からさらに追加して2万人の削減を明らかにした。これにより、2024年度の実績比で固定費と変動費を合わせて計5千億削減することが可能となる。これを受け、生産規模は2027年までに250万台体制となるため、結果的には絞り込まれることになるが、その一方で工場の稼働率が現状の70%から100%への高めることが可能になるとしている。

なお、17ある完成車工場が10まで減るという報道がなされるなか、その対象となるのがどこなのか、会見でエスピノーサ社長は明言しなかった。ちなみに、現在日本にある完成車工場は子会社を含めると5つあり、栃木、神奈川、福岡の3県となる。日産が発表したリストラ計画を受け、マスコミはどの工場になるのか検討をつけはじめた。今、報道で取り上げられているのは、神奈川・横須賀市の追浜工場、子会社の湘南工場(神奈川・平塚市)の2箇所。稼働率の低さで”目星”をつけられた形のようだ。現在、追浜工場では同社のコンパクトカー「ノート」と「ノートオーラ」の生産にとどまっているという。また、子会社である日産車体の湘南工場は、主として商業車を生産。こちらは、「NV200バネット」や「AD」の生産を行なっている。このほか、海外の工場にも目が向いているとされ、メキシコなどを含めて最終的に5工場の閉鎖を検討していくという。

折しも、トランプ政権による自動車関税問題がいまだ暗雲立ち込めており、日産に限らずどの自動車メーカーも戦々恐々の状況にある。そのなかで日産が掲げる目標がどこまで稼働し、再生の道のりを辿っていけるのか。モータースポーツ事業にも”明るい”エスピノーサ社長は、「スポーツカーは日産のDNA、復活させるのは使命だ」と語っており、また「レース活動を中止することはない」と先日のフォーミュラE・東京E-Prixでもコメントしていた。折しも、今年8月にスカイラインGT-Rの生産が終了するが、この先、新たなるスポーツカーが再生のカギとなってデビューするのだろうか。目標達成に向けて舵を切る日産の動向に注目だ。

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