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どうなる? アメリカとの自動車税

コラム

(2025/05/25)

このほど、政府はアメリカの関税措置を巡って三度目の閣僚交渉を行なった。粘り強く措置の見直しを求めているが、改めて現在の進捗をおさらいしよう。

・交渉で要求重ねる
渡米三度目となる赤澤経済再生担当大臣。「一連の措置は遺憾なものであり、今回も見直しを強く求める。日本の国益を守りつつ、建設的な合意の実現を目指して全力を尽くす」と語ったが、さまざまな関税措置への要求のなかで、我々がもっともやはり気になるのは自動車税だ。ところが、アメリカで赤澤大臣を待っていたのは、これまで交渉を重ねてきたベッセント財務長官の欠席という知らせだった。実のところ、双方の立場に隔たりがあるという流れから、アメリカ側が欠席という手段を選んだと見られる。これを受け、政府内ではこのたびの訪米中に合意へと至ることは難しいという見方に至ったとのこと。また、赤澤大臣は、ベッセント財務長官との電話会議を行ない、あらためて渡米して対面での会談を実現させる方向で調整を進めるとしている。

・アメリカからの要求に対する日本の対応
貿易拡大を求めるアメリカの考えを受け、自動車メーカーは新たな対応策を用意してきた。ホンダや日産は、アメリカ向けの車両生産において、その一部を日本からアメリカに移すことを決めており、加えてトヨタでは、アメリカ南部の工場に追加投資を行なうことを明らかにしている。また、自動車生産に欠かせない鉄鋼関係では、日本製鉄によるUSスチールの買収計画も長らく取り沙汰されてきたが、トランプ政権になってからいっそう話が複雑なものとなっていた。だが、日本製鉄が巨額の投資を行なうなど、粘り強く協議を重ねた結果、ようやくトランプ大統領がUSスチール買収を承認。ただし、USスチールとの”パートナーシップ”を承認したという形での承認だったが、そうすることでトランプ政権の体裁を守ったとも言えるのではないだろうか。

結果として、トランプ政権はアメリカの労働者、アメリカの鉄鋼業、そしてアメリカの国家安全保障を守るというトランプ政権のコミットメントと合致したことになる。日本製鉄が買収話を発表してからおよそ1年半という時間を要したが、ようやく実現することとなった。

・自動車に対する25%の追加関税が与える影響
現在、トランプ政権が発動した自動車への追加関税は25%。これを受け、自動車メーカーの6社は2025年度の業績見通しを発表したが、その内容はかなり厳しいものとなった。とりわけ、最終利益において「未定」としたのは、日産、マツダ、スバルの3社。一方、トヨタは前年比でマイナス34.9%、ホンダにおいてはマイナス70.1%としており、その影響額として年間でホンダは6500億円、日産では4500億円になると見込んでいる。まさに”青息吐息”の状態だといえよう。

そんななか、今月上旬にイギリスとアメリカとの間で行なわれた関税交渉では、大きな変化が見られた。というのも、イギリスで生産された自動車に対して、年間10万台までは関税を10%に引き下げることで合意に至ったのだ。この画期的な展開を”お手本”に、日本も今後の交渉で好転を期待したいところだ。とはいえ、その一方で、トランプ大統領自身が、6月1日から欧州連合(EU)の対米輸入品すべてに50%の関税を課すと自身のSNSに投稿。貿易摩擦を再燃させ、EUに揺さぶりをかけている。交渉が難航することに強い不満を示すなか、お得意とする”パフォーマンス”に打って出て、なんとか譲歩を引き出すことを狙いとしているのだろうが、今後日本にも同様のことを求める可能性もあるだけに、引き続き懸念材料を抱えながらの交渉が続くと思っていいだろう。

折しも、来月半ばにはカナダでG7(第51回先進国首脳会議)で開催される。それまでに閣僚同士の交渉を水面下でまとめ、G7サミットでの首脳会談で話が完遂するよう、合意への準備が加速するという見方もあるだけに、大詰めを迎えるであろう関税の行方を注視したい。

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