{ * Script[inc] *}
コラム
(2025/11/28)10月末から11月上旬において、東京ビッグサイトで開催された「ジャパンモビリティショー(JMS)2025」。この場において、中国を代表する電気自動車(EV)メーカーであるBYDが同社初となる軽自動車を披露した。日本特有の市場ともいえる軽自動車において、ついに外国資本のメーカーが参入することになる。いったいこの「黒船」はどういう車両なのか。
・日本におけるBYDの歩み
BYDが日本法人を設立したのは今から20年前の2005年。同社が中国の深?でバッテリーの研究や開発をメインとする事業を起こしたのが1995年であり、それからわずか10年で日本法人を設立したことになる。中国政府によるEVへの補助金という大きな後ろ盾を味方につけ、またたく間にバッテリーEV(BEV)の販売数を世界中で拡大させ、アメリカのテスラに並ぶEVメーカーとして知られるようになった。日本国内では日本法人設立から10年後の2015年にバス事業に進出、日本国内で初となる電気バスを導入している。それから乗用車部門へと市場を広げ、2022年に「BYD オートジャパン株式会社」を設立。2023年にSUV「ATTO3(アット3)」の日本国内販売が始まった。現在は、「BYDジャパン株式会社」に社名を変更している。
現在、日本国内では、アット3はじめコンパクトカーのドルフィン、4ドアスポーツセダンのシール、さらに今年春には、クロスオーバーSUVのシーライオンセブンを発売。4モデルをリリースしている。38の都道府県に正規ディーラーを構えるほか、正規ディーラー厳選による認定中古車の販売も展開するなど、精力的な営業を行なっている。
・日本の軽自動車を意識したデザイン
日本では、国内の自動車販売台数のおよそ4割が軽自動車であり、その多くを販売しているのはスズキとダイハツだと言われる。そんな日本特有の市場に参入を表明し、登場させた車両は「ラッコ」というキュートな名前だった。アナウンスされてからおよそ半年後に開催されたJMS2025でアンヴェールされると、多くの注目を集めたのは言うまでもない。見た目は昨今の軽自動車を代表するデザインとなっており、スーパートール・左右スライドドアを採用している。サイズ的にも、日本最多の販売台数を誇るホンダのN-BOXはじめ、スズキ・スペーシアやダイハツ・タントと似通ったボディサイズとなっている。ただし、全高がやや高いのは、EVの宿命。床明日にバッテリーを掲載することを前提としたプラットフォームであるためだ。それを除けば、ほど日本人が好む”今どき”のデザインに仕上がっており、日本の軽自動車市場にEVで真っ向勝負を挑む覚悟が見て取れる。
日本市場に切り込んでくる以上、とことんリサーチしたと思われる点を挙げればキリがないほど。サイズ感は当然のことながら、室内や装備へのこだわりも半端ない。軽自動車というコンパクトなサイズをいかに最大限活用するか。日本人が考えそうなアイデアをふんだんに取り入れ、利便性にもこだわりを見せる。「これが軽自動車の装備?」と驚くほどの充実ぶりとなっている。
・日本における軽EVの普及、そしてその先にあるのは?
車両価格に目をやると、正直なところまだまだエンジン搭載の軽自動車よりも高価になるのは間違いない。補助金を適用したとしても200万超にはなりそうだ。導入は来年夏を予定しているというが、日本国内では依然としてエンジン搭載タイプのEVが席巻しており、声高らかにEV化を宣言してはいない。都市部の住環境を考えれば、軽自動車、乗用車に関わらずインフラ設備が未だに充実化しておらず、そのなかで200万円超の軽EVを購入対象車として考えることになるのか。そのあたりが気になるところだ。一方、地方都市であればまた考え方は異なりそうだ。ひと家族につき複数台の車両を有し、充電方法の心配もなければ、購入車として候補にあがってくることも考えられる。最近、BYDジャパンでは、楽天市場店をオープンさせており、オンライン上で車両購入を申し込めるようになった。また、イオンモールでも期間限定で展示や購入契約を”出張”という形で実施するなど、PRを兼ねた営業にも力を注いでいる。シェア拡大の一環として、さまざまな取り組みが行なわれているが、そのスピードが中国企業を母体とする会社の強みであり、日本の自動車メーカーとしては脅威になってきそうだ。
また、最近はコンパクトな軽自動車そのものに欧州が注目しているとされ、同社では日本市場を足場にし、場合によっては精力的に欧州へ出ていくことを中長期戦略として視野に入れているのではないだろうか。消費者の目が厳しい日本市場でフィードバックを得ることができれば、それを盛り込んだ軽EVとしてブラッシュアップし、安価な軽EVを欧州の市場へと盛り込む可能性も高い。BYDにおける市場ターゲットとしては、日本はあまりにも小さいのかもしれない。